乳がんになった時、病気や治療のことだけでなく、治療中や治療後の生活を送る中でさまざまな悩みが生じます。そんな時、「身近に病気のことをよく理解してくれて、適切なアドバイスをくれる仲間や先輩がいてくれたら」「患者さんどうしにしかわからない悩みを共有できたら」と思ったことはありませんか?
乳がん患者さんが自分らしい暮らしを楽しむことをサポートするブレケアガーデン(当サイトの旧名称)では、乳がんサバイバー5名のみなさんに、乳がんになってから悩んだことや困ったこと、知りたかったことや生活を楽しむための知恵など、ご自身の体験を共有していただきました。
桜井 なおみ さん(50代)
職業・就業状況:キャンサー・ソリューションズ株式会社 代表取締役社長
サバイバーとしての活動:キャンサー・ソリューションズ株式会社、一般社団法人CSR Project
乳がんサバイバー歴:13年
御舩 美絵 さん(30代)
職業・就業状況:フリーライター
サバイバーとしての活動:若年性乳がんサポートコミュニティ Pink Ring、CNJ認定乳がん体験者コーディネーター
乳がんサバイバー歴:7年
田中 愛子 さん(30代)
職業・就業状況:休職中
サバイバーとしての活動:がんカフェ(一般社団法人暮らしの保健室かなで)、NPO法人C-ribbons、NPO法人ヘルスケアリーダーシップ研究会
乳がんサバイバー歴:4年
箕輪 恵 さん(30代)
職業・就業状況:休職中
サバイバーとしての活動:若年性がん患者団体STAND UP!!、リレーフォーライフちば
乳がんサバイバー歴:9年
吉川 春菜 さん(30代)
職業・就業状況:会社員(事務職)
サバイバーとしての活動:若年性乳がんサポートコミュニティ Pink Ring
乳がんサバイバー歴:1年
治療中・治療後の食事に関する悩みは多くの方が経験されるようですが、みなさんはいかがでしたか。
御舩:普段、患者会などで話をしていても食事に関してはすごく話題にのぼります。乳がんになる方は年齢的に主婦も多いので、食べ物の話だけでなく、ご飯のしたくについてもみなさん関心が高いですね。
桜井:抗がん剤や放射線治療中は、副作用などで食べられるものが限られたり、調理をすることがしんどい場合が多いですよね。また治療後は手がしびれて包丁を使うことが危なかったりつらかったりして、できないことがすごくショックだったりする。
御舩:治療中は買い物に出るのも結構つらいですからね。
桜井:そんな時、引き算のご飯のしたくもあっていいと思うんですよ。無理してやらなくていいんです。つらいときは本当につらいんですから。簡単に作れるのに美味しいとか、豪華な食事にみえるレシピも楽しいけれど、カット済みの材料や缶詰を使ったり、包丁ではなくフードプロセッサーを使ったりする手抜き方法を教えてもらうと参考になるし、気も楽になりますね。もっと言うと、出前をとったっていいとか。
見た目の変化が大きい脱毛ですが、対策として知りたかったこと、逆にこういう情報が助かった、というものはありますか?
桜井:美容室を選ぶ際は、料金がどれくらいかかるのか、治療や生活に関連して費用がかさむ中では、知りたいことですよね。
箕輪:カット料金さえ分かれば、だいたい他のヘアメイクの料金も推測できますから、カット料金とともに美容室を紹介してくれるといいですね。カット料金の提示が難しいようなら、個室あり、ウィッグの持ち込みオッケー、などだけでもわかると助かりますよね。
田中:美容室に行く前に最初に知りたいのはウィッグのことなので、選び方のコツなどウィッグに関する情報が欲しいなと思いましたね。抗がん剤による脱毛についての基本的な知識も知っておきたいところです。
吉川:抗がん剤治療で髪の毛が抜けて、生えていくまでの過程をネットに載せている方がいて、私が治療中は、それを見ることですごく参考になりました。もちろん個人差はあるのでしょうが、自分がこれからどうなるのかがイメージがしやすかったです。それを参考にウィッグを用意する時期を決めたり、帽子の準備などもスムーズにできたので、そういう情報があったらうれしいかなと。
箕輪:私もウィッグ使用者ですし、ウィッグを使っている方が実際に美容室に行ってみて、美容師さんにどんなふうに伝えましたとか、どんな感じで施術してもらいましたということが知りたいです。自分が行ったらこういう感じでやってもらえるんだということが、イメージしやすいなと思います。
吉川:美容室ですごく気になるのは、ファッションウィッグではなく、医療用ウィッグをカットしてくれるのか、美容師さんが抗がん剤による脱毛の毛質を知っていて、ウィッグを外した後、以前と質の違う髪の毛をきちんとカットしてくれるのかどうか、ということですね。
桜井:私は脱毛が落ち着いた頃に以前から通っていた美容室に行ったところ、事情をわかってそれ以降、閉店後の店内で施術してくれるようになりました。普通の美容室でそういう対応をしてくれるお店もある。美容師さんたちには、普通に美容室に来ていいんですよ、まずはひとこと相談してみてください、ということもメッセージとして送ってほしいですね。みんな情報がなく不安なんですよ。
読書やエクササイズなど、乳がんとともに快適な毎日を過ごしていくために必要な情報は何でしょう。
吉川:やはり無理なく身体を動かしたいので、乳がん経験者でもできるヨガの情報がほしいですね。あとはリンパ浮腫のケアに関する情報。
田中:いいものがあると、こんなのあるよと患者同士で結構紹介しますもんね。
田中:個人によっても全然変わってくると思うのですが、治療段階や病状によって、治療・病気に関する情報、生活に関する情報など欲しい情報が違うんですよね。他の方の体験はすごく知りたくなりますね。
桜井:たとえば、日本乳癌学会の基本的なガイドラインの情報もあるといいですよね。自分の病状や治療に当てはめて参考にできます。
御舩:お見舞いに行く側は何を持って行こうか迷うことも多いので、本などお見舞い品にはどんなものが喜ばれるのかなども参考として知りたいですよね。また、大切な人ががんになった時に、周りの方はどんなふうに接したらいいのか、参考になるような情報があったらいいなと思います。こんな時にはどういう言葉をかけたらいいんだろう、と悩むことがあると思うんです。同じがんを経験していても、人それぞれ状況は違いますし、周りの方たちが参考になるような体験談があるといいなと思います。
治療による身体の変化に伴い、ファッションやメイクも工夫が必要になるようですが、皆さんはいかがでしたか?
桜井:経験者から言うと、ファッションアイテムは必ずしも乳がん患者専用の製品でなくとも、案外既存の一般向け製品が使いやすい場合もありますね。アイテムも色々なものが出ているので、自分に合ったものを選べるといいですよね。
御舩:個人的には手術痕をタオルで上手く隠して温泉に入れたので、いかにして浴場でタオルを使って自然に傷跡を隠せるか、というアイデアなんかも知りたいですね。
本日は、お忙しい中にお時間割いて頂きましてありがとうございました。同じ乳がんに関する悩みを抱えていらっしゃる患者さんのヒントになればと思います。
(取材日2017年10月)