がんと食べ物・栄養

抗がん剤治療中、食べてはいけない(控えた方が良い)食材はありますか?

バランスのとれた食生活が一番なので、食欲不振や嘔吐・吐き気、下痢などの症状がないのなら、まんべんなく色々な食材を摂ることが一番だと思います。

沢井 紀子 先生
(薬剤師)

乳製品を摂ってはいけないのですか?

牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品を食べることが、乳がんを悪化させるという科学的データは特にありません。
ちまたには、乳がんの方の食事に関してさまざまな情報があふれていますが、本来は何も難しいことはなく、さまざまな栄養を食事からまんべんなく摂ることが大切です。がんになったからといって、好きな食べ物を必要以上に我慢したり、逆に特定の食品だけを無理して食べることはせず、栄養バランスのとれた食事をご家族や友人(親しい方々)とともにおいしく食べましょう。

渡辺 亨 先生
(浜松オンコロジーセンター 院長)

人参ジュースは飲んだほうが良いですか?

患者さんからよく受ける質問として、「人参ジュースは飲んだほうが良いですか」、「コンドロイチンやコラーゲンのサプリメントは飲んだほうがいいですか」、「コーヒーは良いですか」などがありますが、人参ジュースも含めて、がんの治療に際して、ある特定のものを積極的に摂取したほうがと良いということはありません。かたよらず、バランスの良い食事を摂ることが基本です。抗がん剤の治療中には、副作用などから食欲不振になることがあるので、バランスよく食べるのはかなり難しい場合もあります。バランスよく食べなければと無理矢理食べるとかえってストレスになる恐れがあるので、そういう時には食べられそうなものを摂るようにしましょう。

坂東 裕子 先生
(筑波大学医学医療系 乳腺内分泌外科学分野 准教授)

お酒は控えたほうがよいのですか?

アルコール飲料の摂取は、がん発症の可能性を高めるといわれています。一方、再発がん患者さんにとってどのような影響があるのかについて、現時点で結論は出ていません。
ほどほどであればアルコール飲料も問題ないと考えられますので、無理にやめるより、時には適度な量を楽しみながらリフレッシュして前向きに治療を続けていくことも大切です。

渡辺 亨 先生
(浜松オンコロジーセンター 院長)

肉は食べないほうがいいと聞いたのですが?

診察をしていると、よく患者さんに「肉は食べてはいけないのですか(食べてもいいのですか)」という質問を受けることがありますが、肉自体、または特定の肉が、がんに影響するということはありません。牛肉、豚肉、鶏肉など、種類によってそれぞれ摂取できる栄養素が違いますので、日々の食事の中でこれらをバランス良く取り入れていってください。

坂東 裕子 先生
(筑波大学医学医療系 乳腺内分泌外科学分野 准教授)

マルチビタミンのサプリメントを飲んでも良いですか?

ビタミンのサプリメントを飲んでも特に治療や病気に影響が出ることはありません。ただし本来は、ビタミンをはじめとする栄養素はなるべく日々の食事の中で摂取し、欠乏した分をサプリメントによって補うと良いでしょう。普段からバランスの良い食事を心がけ、日常で口にする食べ物から自然に補うことが望ましいでしょう。

竹原 めぐみ 先生
(めぐみ乳腺クリニック 院長)

女性ホルモンに似ている大豆イソフラボンをとっても、乳がんは再発しないのでしょうか?

豆腐、味噌、納豆などの大豆食品に多く含まれる大豆イソフラボンは、植物性ホルモンと言われており、化学構造が女性ホルモンに似ています。大豆食品は、古来から日本人の食生活をささえてきた大切な要素であり、日本人やアジア人が食事から摂取する量は欧米人などに比較してとても高いことが知られています。女性ホルモンはいわゆる“ホルモン受容体陽性乳がん”(エストロゲンあるいはプロゲステロン受容体陽性乳がん、全乳がんの約70%程度をしめる)の発生や増殖を促進することが知られていますが、イソフラボンは女性ホルモンの作用を阻害することにより、乳がんを予防する効果があるのではないかと考えられています。一方、弱いエストロゲン作用により、基礎研究などにおいては乳がんに対して悪影響を及ぼす可能性も懸念されます。
乳がんに対する大豆イソフラボンの影響を考える上で、① 乳がんの発症予防効果、② 乳がんを発症している方が大豆食品を食べることの安全性を分けて考えてみましょう。

① 乳がんの発症予防効果:
厚生労働省研究班が行った、「多目的コホート研究(JPHC 研究)」(40~59歳の女性を対象にした10年間の前向き追跡調査)においては、味噌汁や大豆イソフラボンの摂取量と、乳がん発症リスクの低減に相関関係があり、イソフラボンをあまり食べない人に比べ(味噌汁1日1杯以下など)、たくさん食べる人の方(味噌汁1日3杯以上など)が乳がんになりにくいことが報告されています。他の研究でも大豆摂取量の高いアジアでは、イソフラボンの摂取により乳がん発症が減少する可能性が報告されています。
② 乳がんを発症している方が大豆食品を食べることの安全性:
乳がんを発症している方に対するイソフラボンの影響を調べた質の高い研究は限られていますが、近年の解析では乳がん診断後の大豆およびイソフラボン摂取が、乳がんの再発や死亡を減少させる可能性があると報告しています。今後も精度の高い研究を日本人も含めて行う必要があると考えられますが、少なくとも乳がん患者さんがイソフラボンを摂取することによる明らかな副作用は報告されていません。

上記のように、現時点では食事から摂取される程度の大豆イソフラボンによる乳がんへの悪影響は確認されていません。しかし、乳がんの治療を行った方が、サプリメントとして高用量のイソフラボンを摂取することに関しての安全性は証明されていないので、こうしたサプリメントによる大豆イソフラボンの摂取は控えるようにしましょう。
多くの大豆食品はイソフラボンだけではなく、ほかにも不飽和脂肪酸、食物繊維、ビタミン類、ミネラル類、植物性タンパク質など、体にとってよい成分を多く含む食品です。日本人にとって、無理なく、おいしく、健康的な食生活を楽しんでいきたいものですね。

坂東 裕子 先生
(筑波大学医学医療系 乳腺内分泌外科学分野 准教授)

化学療法の副作用で無月経です。摂り過ぎるのも心配な気がしますが、大豆などからイソフラボンをたくさん摂った方がよいですか?

化学療法で使用するお薬によっては治療を行っている間、4割近くの方が無月経になるといわれています。ただ過度に心配する必要はありません。イソフラボンをあえてサプリメントで摂取しようとするのではなくて、おいしい食事で無理なく健康に摂取することを心がけてください。何事もバランスが大事です。

渡辺 亨 先生
(浜松オンコロジーセンター 院長)

腎機能が低下していてもカリウムやリンが多いアボカドを食べても大丈夫でしょうか?

カリウムやリンに関しては、腎機能がかなり低下されている方や透析をされている方は食事からの摂取も控える指導がされていると思います。
バナナをはじめとする果実や生野菜などの食事制限がある方はアボカドも控えたほうがよいでしょう。
カリウムは過剰なナトリウムの排泄(塩分を摂りすぎた時など)にも必要な栄養素です。
カリウム制限のない方は、安心して食べてください。

沢井 紀子 先生
(薬剤師)

添加物や保存料などはなるべく摂らない方がよいのですか?

一般的に摂りすぎはあまり良いとは言えませんが手抜きも重要なので、気にしすぎも良くないです。上手に取り入れましょう。

竹原 めぐみ 先生
(めぐみ乳腺クリニック 院長)

どうしても食欲がありません。どんなことに気をつけたらよいですか?

食欲がない時に無理して食べるとかえって吐き気をもよおすことがあります。
脱水にならないように注意していれば、極端な事を言えば数日間は食べなくても大丈夫なので、無理に食べることを考えなくて良いです。(水分もとれない場合は医師に相談して下さい)
「食後」の薬も、食事していなくても飲んで良いものもありますので、無理に食べてから飲むのではなく、医師に相談しましょう。

竹原 めぐみ 先生
(めぐみ乳腺クリニック 院長)

抗がん剤で治療を始める時に、感染症にかかりやすくなるので気をつけるようにいわれました。食事、生活上での注意点はありますか?

ふだん気を付けている程度に食事もふつうにバランスのとれたものであればいいと思います。食材では生のカキなどは注意したほうがいいかもしれませんが、それほど神経質になる必要はないです。

渡辺 亨 先生
(浜松オンコロジーセンター 院長)

治療中は生ものを避けて、加熱したものを食べたほうが良いのですか?

火の通っていないひき肉やかきなど普段の食事で気をつけるもの以外で気にすることはありません。

渡辺 亨 先生
(浜松オンコロジーセンター 院長)

抗がん剤の治療中で感染症が心配なのですが、お刺身を食べても大丈夫ですか?

よくいわれていますが、抗がん剤治療において下がる程度の白血球減少に対しては特に気にする必要はないと思います。
ただし、手洗いやうがいなどをしっかり行い、感染予防を心がけることは大切です。

竹原 めぐみ 先生
(めぐみ乳腺クリニック 院長)

治療によって食欲が増加することもありますか?

ホルモン療法や化学療法の前投薬としてのステロイドで食欲が出ることがあります。
一時的なものですので、食べられるときは気にせず食べましょう。

渡辺 亨 先生
(浜松オンコロジーセンター 院長)

乳がん患者にとって肥満はよくないと聞きました。肥満と乳がんの関連について教えてください。

極端な肥満ではないかぎり、乳がんとの関連は気にする必要はありません。
脂肪の中に男性ホルモンから女性ホルモンに変換する酵素があるので、あまり太るとその酵素が増えて、アロマターゼ阻害剤(ホルモン療法で用いられるお薬)が効かないケースがあります。WHO(世界保健機構)が定めた肥満判定の国際基準、BMI(Body Mass Index;肥満指数)35以上の場合は、注意したほうがいいですが、カロリーを気にしすぎることなく食事を楽しむことも大切です。

【BMI 35以上】

BMIは下記の計算式で求められます(身長160cm、体重90kgの場合)。
BMI=体重(kg)÷[身長(m)×身長(m)] ⇒ 90(kg)÷[1.6(m)×1.6(m)]=35.2

渡辺 亨 先生
(浜松オンコロジーセンター 院長)

カフェイン摂取は、治療に影響を及ぼしますか?

カフェインは、抗がん剤治療に影響はありません。かえって、コーヒー、紅茶、日本茶などでリラックスできる時間を持つのはいいことですね。同じ嗜好品でもタバコはお薦めしませんが、アルコールは「百薬の長」といわれているので、ほどほど、たしなむ程度であればいいと思います。

坂東 裕子 先生
(筑波大学医学医療系 乳腺内分泌外科学分野 准教授)

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