1. ファッション編
「術後の胸に合うブラジャーが少ない」
「専用のブラジャーが高額」
(アンケート結果より)
乳がんの治療を終えた方にとって、ブラジャーに関する悩みは、ファッションのことのなかでも最も切実な問題ではないでしょうか。しかも一過性のことではなく、一生付き合っていく問題です。
今まで使っていたブラジャーではサイズも形も合わないし、無理につけると痛みが出てしまう…。そういう点を考慮して作られた乳がん経験者専用のブラジャーもありますが、色やデザインのバリエーションが限られ「気に入ったものが見つからなかった」、「高額で最初から買う気にならなかった」という声も多く耳にします。実際、専用のブラジャーを購入した人の多くが1枚5000円以上かかっており、なかには1万円以上かかったという方も。またメーカーの専用ルームなどに足を運ぶのが億劫だったり、販売員立ち合いのフィッティングに抵抗を感じる方も少なくないようです。
しかし専用のタイプにこだわらなくても、工夫次第でもっと自由に手軽に自分に合うブラジャーを選ぶことも実は可能なのです。
専用ブラジャーにこだわらず、ソフトブラを活用
全摘・温存・再建など手術法の違いでブラジャーの具体的な悩みは異なりますが、共通していえるのは、縫い目のあたりや締め付け感が少なく、着け心地がソフトなものがいいということ。ワイヤーが肌にくいこんだり、圧迫感があるものは、長時間着けているうちに負担になってくることがあります。
そこでおすすめは、ノンワイヤーのタイプやソフトブラ、スポーツブラ、あるいはカップ付インナーといった締め付け感の少ないブラジャー。マタニティブラにも可愛くてソフトなものがあります。
カップの内ポケットにパッドを自分で入れて調整できるタイプのブラジャーも便利。ガーゼやタオルで調整して使ったなど、お手ごろな価格で買えるものを自分でアレンジして使っていた方も多いようです。
大事なのは、自分自身が快適に過ごせること。痛み、違和感がなく過ごせる方法を工夫してみてください。
先輩からのアドバイス
- ・大きめの子ども用のブラジャーを、痛くならないように自分で改善して使用!
- ・スーパーや100円ショップで安く売っているものは、作りが雑なおかげで、意外と快適で役立った!
- ・ブラジャーを着けなくても支障のない服装を選び、ノーブラで過ごしていた!
「胸の谷間が見える服、ノースリーブの服はもう着られない…。
おしゃれの楽しみが減った」
(アンケート結果より)
手術の跡が気になって胸の谷間が見えるような服は着られないし、脇のリンパ節を取ったため脇が見えるノースリーブの服も着られない、夏場にTシャツ一枚で過ごすことも抵抗がある…。そんな悩みを抱えている方も多いでしょう。こうした制限があることで、今までと同じようにはおしゃれを楽しめなくなったという方も少なくないかもしれません。
治療終了後にリンパ浮腫が生じてしまい、切除した側の腕だけ太くなってしまったため、半袖の服も着にくくなったという方もいらっしゃいます。
着られる服でおしゃれを楽しむ
たとえば胸のラインが目立つタイトな服が無理なら、ゆったりとしたシルエットの服を選び、ウェストをベルトで絞って細くみせるという方法もあります。胸元の開いた服を着るときには、下に異なる色のキャミソールなどを重ねてカラーコーディネートしてみるとか、ちょっと発想を変えるだけでおしゃれはもっと楽しくなります。以前とまったく同じやり方でファッションを楽しもうと思うと、確かに難しいかもしれません。
でも、前とは違うタイプの服や新しい着こなしに挑戦するなどポジティブにおしゃれを楽しむことによって新しい自分に出会うことができるはずです。
カーディガンや小物でカバー
ノースリーブを着るときにはカーディガンを肩に羽織ったり、スカーフやアクセサリーをうまく使ったりと、アイテムを足すことで、見られたくない部分をさりげなくおしゃれにカバーすることも可能です。
また、特に見た目が気になる傷口には、肌色のキズテープを使うという方法もあります。ただし、キズテープを使う場合は、傷口を清潔にしておく、もしも痒みが生じたり、赤くなったりしたらやめるなど、注意してください。
先輩からのアドバイス
- ・ケロイド状になってしまった傷口にはキズテープを貼っている!
- ・ノースリーブにこだわらなくても洋服はある、着られる服でおしゃれを楽しむ!
「プールや海に行きたいけれど、
周囲の視線が気になって行けない」
(アンケート結果より)
ノースリーブや胸元の開いた服が着られないという方にとって、もっと露出の多い水着はさらに抵抗があるのではないでしょうか。腹部や背中などの自家組織を使って乳房の再建手術を受けた方にとっては両方の傷口が気になるでしょうし、傷が大きい方は水着では隠しきれないかもしれません。
でも、楽しみをあきらめてしまうのももったいない。がん経験者の先輩たちが行っている工夫を参考に、自分なりに楽しむ方法を探ってみてください。
乳がん患者用の水着、長袖の水着を活用
最近では、乳がん患者さん用の水着や、水着に装着できるパッドが販売されています。また、日焼け防止用の長袖の水着を着用するという方法も。「二度と水着姿にはなれない」と思っていた方でも、こういった水着やパッドを利用して、スポーツジムのプールに再び通い始めたり、お子さんや友人らとプールや海で楽しんだりされている方は多くいます。
着替えは自宅や個室で!
最も周囲の目が気になるのは泳いでいる最中より、着替えのときかもしれません。自宅で洋服の下に水着を着て行き、プールから上がった後の着替えは個室やロッカーの片隅で行うなど、なるべく人の目に触れないようにすることでストレスを軽減することができます。
子どもがプールで使う「着替え用ポンチョ」をバスタオルや布で自分用に手づくりするというのも一つの方法。お気に入りの柄でつくれば、着替えが楽しくなります。
また、一緒に行く人には事前に伝えておくとお互いに過度に気にする必要がなく、安心かもしれません。
先輩からのアドバイス
- ・首まで隠れる水着を買い、パッドを縫い付けて使用!
- ・週5日はプールにいってますが、着替えは自宅や個室です!
- ・海に行くときには、乳がん患者用のパッドを付けた水着の上に、透けないTシャツを着ていく!
「温泉に行きたいけれど、裸を見られるのは嫌…」
(アンケート結果より)
温泉好きな女性は多いですよね。実際、「温泉に行きたくとも行けない」という悩みは、今回の調査結果でも全体の4分の3もの人が経験しているほど、多くの乳がん経験者に共通する悩みでした。とはいえ、温泉では裸にならざるを得ませんから、リラックスするために行っているのに、周囲の目が気になってリラックスできない…なんてことにもなるかもしれません。でも、最近では貸し切り露天風呂がある施設が増えています。
乳がん経験者の先輩たちは、空いている時間帯に入る、家族風呂を使う、同じ悩みを持つ仲間と一緒に行くなど、それぞれ工夫しているようです。
時間帯を工夫、人が少ない温泉を選ぶ
小さな温泉宿を選び、遅めの時間に入るなど、人が少ない時間を狙えば、ほとんど他人の目を気にすることなく温泉を楽しむことができます。それでも気になるという方は、露天風呂付の部屋を予約する、家族風呂を予約するという方法もあります。
温泉は、手術の跡を見られても気にならない人と
温泉に一緒に行くということはそれだけ気心の知れた人のはず。特に手術の跡が気になる方は、見られてもよい方と行きましょう。
同じ悩みを持つ仲間と定期的に行くという方もいらっしゃいます。
また、温泉で出会う人の視線が気になるという方も多いでしょう。
タオルや入浴用の専用カバーを身につけて入ったり、なるべく目立たない洗い場を選んだりと、皆さん工夫しているようです。
先輩からのアドバイス
- ・知人に会う可能性のない温泉に行き、家族風呂に入った!
- ・見られても気にしないようにしている!
「エステやマッサージに行きたくても行けない」
「いつも行っていた美容院に行きたいけれど、
脱毛した状態を見られるのは嫌…」
(アンケート結果より)
医師や看護師以外に術後の体を見られるのは抵抗があるという方は多いと思います。普段は下着などで補正することができますが、エステやマッサージなどではどうしても肌をさらさなければなりませんし、患部に触れられるのも抵抗がありますよね。そのため、ボディマッサージは控えて、フェイシャルマッサージのみ受けたという方が多いようです。
また、化学療法が終了した直後は、脱毛だけではなく、「毛質が変わった」「脱毛後に生えてきた髪のくせが強くなった」といった声も聞かれます。もし、数年経っても髪の毛の量が戻らない方は、遠慮なく医師などに相談しましょう。
乳がん経験者がいる美容院、病院近辺の美容院に
インターネットで検索すると、乳がんを経験した美容師、あるいはご家族に乳がん経験者がいる美容師がいる美容院を探すことが可能です。また、安心して話ができるよう、個室を用意している美容院も。自宅から行きやすい場所にそうした美容院がない場合は、病院の近くにある美容院にあたってみてはどうでしょう。がんの患者さんの対応に慣れている美容師に出会えるかもしれません。
髪の毛が生え揃ったタイミングで
ずっと通っている美容院がある方にとっては、他の美容院に行く方が抵抗があるかもしれません。そうした場合、髪が伸びるまで待ってから行った、事前に事情を話してお店の裏のほうでカットしてもらったという方も。気心の知れた美容師さんであれば、率直に事情を話してみるというのも一つの方法かもしれません。
先輩からのアドバイス
- ・自分でバリカンを使ってカットした!
- ・髪の毛がある程度生え揃ってから、若い人が少ない美容院に!
「リュックサックや肩掛けバッグが痛い」
「ブーツやヒールのある靴が履けない」
(アンケート結果より)
乳がんの手術を受けた患者さんの場合、浮腫を予防するためにも術側で重いものを持つことはできるだけ避けたいもの。手で持つと重いからといって、肩にかけてしまうと、ベルト部分が胸に触れて気になったりと、バッグの選び方も悩むポイントの一つではないでしょうか。また、足がむくんでしまって、ブーツ、ヒールのある靴が履けないという悩みもよく耳にします。
バッグは軽い素材のものを。斜めがけの方がラク
バッグは、どんなタイプであってもなるべく軽い素材のものを選びましょう。肩にかけるショルダーバッグの場合、なるべくショルダーのベルトが幅広いものを選ぶか、痛みが生じないよう、ハンカチやタオルをあてておくことも大事です。また、片方に負担がかかるハンドバッグより、ショルダーバッグを斜めがけする方が負担が少ないので、試してみてはいかがでしょうか。
スニーカー、ローヒールの靴を
むくみや運動不足のためにハイヒールの靴は履けないという方は、無理せず、ローヒールの靴、スニーカーを選びましょう。転倒などのリスクを回避するうえでも重要です。治療が終わり、むくみがとれれば以前履いていた靴をまた履けるようになるでしょうから、まずは負担のないものを優先することが大切です。
先輩からのアドバイス
- ・オフィス用に、素敵なスニーカーを妹がプレゼントしてくれた!
- ・足がむくんで履けなくなった靴は、治療後の楽しみとして保管!