乳がんとリンパ浮腫

リンパ浮腫とその他の一般的なむくみ(浮腫み)はどう違いますか?

リンパ浮腫は、リンパ節切除(リンパ郭清)や放射線の照射により、リンパ液の流れが悪くなったのが原因で発症するため、一般的なむくみとは違います。立ち仕事などで足がむくんだからとリンパマッサージを受ける方がいますが、リンパ浮腫の場合、むくみを取るためにこのマッサージをすると、かえって悪影響を及ぼす可能性があります。正常なリンパ節へと誘導するマッサージでなければ効果はありません。一般的なむくみとリンパ浮腫は、治療法・対処法はまったく違います。

竹原 めぐみ 先生
(めぐみ乳腺クリニック 院長)

リンパ浮腫を予防するためにはどんなことに気をつければよいですか?

リンパ浮腫は発症してしまうとなかなか治らない病気なので、予防がとても大切です。
一般的な「むくみ」とは少し違うので、利尿剤などで水分を出しても良くはなりません。
しかし、水分による「むくみ」や体重の増加によりリンパ浮腫が発症・悪化することがありますので、塩分やカロリーが高すぎる食事には気をつけた方がよいでしょう。
わきの下のリンパ節を取る手術(リンパ節郭清)をした場合、一生のうちに約50%の人がリンパ浮腫を発症する可能性があります。センチネルリンパ節生検をした場合の発症の可能性は5%前後とされていますが、0%ではありません。
手術した方の腕を酷使しないよう心がけ、だるさを感じるようであれば腕を少し高くして休ませること、ケガや虫刺されに注意し、何か異常を感じたら受診時に相談しましょう。

竹原 めぐみ 先生
(めぐみ乳腺クリニック 院長)

リンパ浮腫に気をつけるように言われたのですが、包丁を扱うのに気をつけることはありますか?もし指を切ってしまったら、どういう処置をすればいいでしょうか?

リンパ浮腫の方が怪我をすると、そこから菌が入り込み蜂窩織炎(ほうかしきえん)になる可能性があります。包丁で切ってしまったのであれば、まずはきっちりと消毒してください。必ずしも蜂窩織炎になるわけではないので、なんともなければふつうの傷と同じ処置で大丈夫です。かすり傷程度であれば何もしなくてもいいかもしれないですが、腫れてくる、赤くなってくる、熱をもってきたりしたら、病院で処置をしてもらうといいでしょう。
また、リンパ節切除後はリンパ浮腫になる可能性があるので、皮膚は傷つけない、手術した側の手にあまり負荷をかけないなどの注意が必要です。たとえば、庭仕事をする時は、手袋をして、虫に刺されないよう長袖を着る、腕が重だるさを感じる荷物は持たないなどですね。

※蜂窩織炎(ほうかしきえん)
蜂窩織炎は、黄色ブドウ球菌などの細菌感染により生じる化膿性の皮膚炎症で、蜂巣炎(ほうそうえん)とも言います。主にひざ下に発症しますが、発症部位によって呼び名が異なり、手足の指先にできたものはひょう疽(ひょうそ)、口の中にできたものは口底蜂窩織炎(こうていほうかしきえん)、肌の表面に感染したものは伝染性膿痂疹(でんせんせいとびひ)と、言います。
感染すると、皮膚が広範囲にわたり赤みを帯びてきて、熱感、痛みを伴いながら、徐々に腫れ上がってきます。重症化すると皮膚組織が死滅し、生命に危険をもたらす病気を引き起こすおそれがあるので、兆候があらわれたらできるだけ早く医療機関を受診することが大切です。

竹原 めぐみ 先生
(めぐみ乳腺クリニック 院長)

リンパ浮腫に対して、食生活で気をつけることはありますか?

肥満は、リンパ浮腫にとって明らかに悪影響があります。太っていると体の脂肪が体表のリンパ管を圧迫し、リンパの流れがますます悪くなるので、体重を増やさないよう食べ過ぎには注意が必要です。
昔、リンパ浮腫がひどかった患者さんに、「やせたら良くなりますよ」とアドバイスしたら、15kgぐらい減量してきたのには驚きました。患者さんから、「やせたらリンパ浮腫がなくなり、元に戻りました」と報告がありましたが、やはり、リンパ浮腫にとって肥満は大敵ですね。

竹原 めぐみ 先生
(めぐみ乳腺クリニック 院長)

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